IT文字記号の歴史「¥と \ 」
つーじーです。
ITでは多くの「記号」が使われております。中には由来がよくわからないもの、なぜそのような構造になっているのか不思議であるもの、などがあります。
今回はそんなITでよく使う文字の一部の歴史を紐解きたいと思います。
■アドレスの「¥」と「\」の謎
フォルダのアドレスを構築する際、フォルダ間の記号には「¥(円マーク)」が使われます。
C:¥Users¥Documents
フォルダのアドレスにこの記号を使用しているのは日本だけです。他国では一般的に「\(バックスラッシュ)」が使用されます。
なぜこのようなことが起きているのでしょうか。そのためには一部の歴史を紐解く必要があります。
◆事の発端『MS-DOS』
MS-DOSは、1981年発売のIBM PC用のディスクオペレーティングシステムとして開発されもので、デジタルリサーチ社の8080用OS「CP/M」をほぼ真似して作られたものです。
最初の頃は階層型ファイルシステムを導入しておらず、ディスク上の一つの階層で全てのデータを管理しておりました。
なので「パス区切り」という概念が存在しなかったのです。
バージョン2.0から階層構造が導入されました。
当時主流の階層構造はパス区切りに「/(スラッシュ)」を使用していたのですが(UNIXはパス区切りがスラッシュ)、開発の際お手本にしたCP/Mが「コマンドラインオプションにスラッシュを使用する仕様」であったために、
『オプション記号』と『階層のパス区切り』でスラッシュが混在する事態となったのです。
オプション記号とパス区切りが同じだとプログラムエラーやミスを引き起こす可能性があったため、パス区切りにスラッシュを使うことができませんでした。
そこで、ほぼ同じ形のバックスラッシュを採用することにしたのです。
しかしこのバックスラッシュの採用があだとなりました。
◆変更可能な文字コード
実はバックスラッシュは、標準規格であるISO646で定められている
『変更可能な文字コード』の一つだったのです。
『変更可能な文字コード』とは「各国の都合で自由に変えても良い文字」として定められているもので、
具体的には以下の文字がそれに該当します。
$ @ [ \ ] ^ ` { | } ~
日本で使用される『JIS ローマ字』では、
バックスラッシュ( \ ) を 円( ¥ ) に変更し、
チルダ( ~ ) を オーバーライン(  ̄ ) に変更しました。
これが原因で、本来バックスラッシュで区切られるパス区切りが円マークで区切られることとなったのです。なぜ変更可能な文字コードをパス区切りに使用してしまったかについては、明確なソースは見つけられませんでした。
余談ですが、この現象は他の国でも発生したことがあり、
韓国では バックスラッシュ( \ ) を ウォン( ₩ ) に変更したため、
パス区切りが₩になっております。
C:₩Users₩Documents
ITにもいろんな歴史あり、です。
今回はこれにて。